肩こりとは
人間は二足歩行をする為に、もともと首や腰に負担がかかり易い体をしています。
首から肩にかけての筋肉が姿勢を保つ為に緊張し、血行が悪くなって、筋肉がこわばり、だるさ、重さ、疲労感、ときに痛みを感じる症状が肩こり(肩こり痛)です。
関係する筋肉は色々とありますが、首の後ろから肩、背中にかけて張っている僧帽筋という幅の広い筋肉がその中心となり、他の頸部、背部筋肉も関わっています。
肩こりの原因
A: 首や背中の緊張する様な姿勢
パソコンやスマホの操作、読書、手仕事等をする時、多くの方は顔を下向き、首を少し前に突き出す姿勢になっています。
また、両肩を少し前にすぼめる姿勢にもなりがちです。
こうした姿勢を続けていると、首から肩の筋肉に緊張性の疲労が生じ、血流が悪くなり、肩こりを起こり易くなります。
また、元々姿勢の良くない方、(猫背、前かがみの姿勢、腰の姿勢が悪い)なで肩でショルダーバッグを長時間かけている方も症状が出易いと考えられます。
B: 精神的なストレス、運動不足等
ストレスによる緊張
肉体的または精神的なストレスを受けると、筋肉を緊張させる自律神経(交感神経系)の働きが活発になります。
その為、肩周辺の筋肉が緊張し肩こりが起こります。ストレスが一時的なものであれば回復しますが、連日ストレスにさらされると筋肉の過剰な緊張が続き、肩こりが慢性化する事があります。
肩こりの慢性化は、慢性的な疲労にも繋がります。通常の疲労は休息や睡眠で解消できますが、精神的なストレスが重なると休息や睡眠も不完全なものとなり、更に疲労が溜まり、肩こりも慢性化する事になります。
閉経の前後、約10年間をさす更年期を迎えると、女性ホルモンのバランスが急激に変化し、子育て、親の介護、仕事場のストレス、心や体にトラブルが起こし易い時期でもあります。この時期に現れる自律神経失調症に似た様々な症状を更年期障害といいます。
症状には、肩こりや疲れ、だるさ、のぼせやほてり、イライラや不安感等があり、仕事や家事等の日常生活に支障をきたす場合が少なくありません。
運動不足による筋肉疲労と血行不良
体を運動している方は、筋力増強だけではなく、筋肉の血流も良くなり、新陳代謝は盛んに行われています、
老廃物もスムーズに排除されます。日頃から体を動かしていない人は、筋肉が普段使われないので、筋肉の緊張や疲労が起こり易くなります。
運動不足は血行不良を招くので、老廃物も組織に溜まり易くなり、これもまた肩こりの原因になります。
加えていえば、体を動かさなくても一定の姿勢を維持するためには筋肉を緊張させる必要があり、運動不足は肩こりの大敵と言えそうです。
寒さによる肩の筋肉の緊張、自律神経の乱れ
寒い場所や冷房の効いた部屋で長く過ごしていると筋肉が緊張します。
更に、寒さは自律神経の乱れも引き起こし血行も悪くなり、筋肉の緊張が強まり、これらが負のスパイラルとなり、肩こりの原因となります。
C: 眼精疲労、目の疾患
通信発達この時代、パソコン、スマートフォン、タブレットなどの長時間使用による目の酷使や、メガネの度が合っていない、ブルーライトや紫外線の影響、ストレスや睡眠不足による自律神経の乱れ等は目を疲労させる要因になります。
そして、これが続くと慢性的な目の疲労が定着し、目の症状だけでなく、肩こりも含めた全身の疲れを伴う眼精疲労を引き起こします。
また細かい文字等を見続けると、目やその周囲の筋肉が緊張し、それと同時に首や肩も緊張します。
とくにパソコンやスマホの場合、光源を見つめているのと同じなので目が常に緊張を強いられ、まばたきの回数が減ります(通常は毎分15~20回程度。パソコン・スマホ作業中は毎分1~2回に激減)。その為ドライアイから眼精疲労を起こし、白内障、網膜剥離等も視力低下も肩こりの原因ともなります。
D: 頸椎、肩の疾患、頭蓋内疾患、高血圧、低血圧、耳鼻咽喉科疾患
変形性頸椎症
首の骨と骨の間をつなぐ椎間板の弾力が加齢に伴い減少する事で起こります。
弾力が減少すると、椎間板ヘルニアなり、また、椎間板が潰れる事によって、隣接している椎体がトゲの様に変形します。
このトゲが、頸椎の間から出る肩、上肢に向かっている神経を圧迫して刺激し、これにより首から肩甲骨、腕、手指にかけて強い痛みや痺れの症状が現れます。
また、デスクワークの方は長時間的首が前屈姿勢で作業しています。
普通の方でも時間があれば、直ぐに携帯を取り出し、顔が下に向いて携帯を見ています。
この状態を長く続くと、頚椎の本来有るべき前弯が無くして、ストレートネックと言われる頚椎になって、延髄から頚髄に移行部が鋭角になり、また、脊柱管も狭くなる事によって神経が圧迫され、肩凝りの原因ともなります。最近外来でも、若年の方の肩凝りの症状がお持ちの方も着実に増えています!!
四十肩、五十肩
正式名称は肩関節周囲炎といいます。
加齢に伴い、肩関節とその周辺の組織が慢性的な炎症を起こし、腕を上げたり、腕を後ろに回したりする動作が痛みの為に制限されます。
じっとしていても、夜中に眠れない程痛む事もあります。
肩の痛みは、程度によって6カ月~1年半程で回復しますが、回復を早めるには肩の軽い運動と肩の体操等を行うのが効果的です。
痛さのあまり動かさないままにして置くと、肩の動きが更に悪くなってしまう事もあります。
頭蓋内腫瘍、神経圧迫
頭蓋内腫瘍、神経圧迫肩凝りの原因となりますが、症例は少ないですが、注意が必要です。
高血圧症、低血圧症
遺伝や肥満、塩分の摂り過ぎ等の生活習慣が原因で収縮期(最大)血圧140mmHg以上、拡張期(最低)血圧90mmHg以上が続く状態です。
高血圧症は、狭心症、心筋梗塞、心不全、脳梗塞、脳出血等重篤な病気を引き起こす可能性があります。
自覚症状がない場合が多く、肩こりや動悸、のぼせ、息切れ等の症状が現れるがあります。
低血圧も血流の障害、意欲、筋力の低下により肩凝りが起こります。