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枕の役割、知っていますか?

枕の役割

枕は人間の生活中に大変重要な役割を果たしています。なぜならば、人間は一生約1/3~1/4の時間が寝ています。自分に合う枕の選択はいかにも大事な事で最近の研究で段々明らかになって来ました。

睡眠の質の改善

睡眠の代表的な効果は心身と共に疲労回復を回復させる事です。睡眠不足は身体にとって様々なリスクを孕んでいます。体調不良や身体、精神疾患の原因にもなりえます。

  1. 記憶力、集中力の低下によって、運転中の事故、仕事の効率低下、イライラする事によって人間関係の崩壊にも繋がります。
  2. 太りやすくなります。短い睡眠時間で食欲をコントロールするホルモン の分泌バランスが崩れます。食欲を亢進させるグレリンの分泌が上昇、逆に抑制するレプチンの分泌は減少がみられます、肥満になる確率が高くなります。睡眠時無呼吸症候群、高脂血症、高血圧症に発展して行きます。
  3. ストレスの増加。睡眠は内分泌のリズムを整える事で、ストレスの解消になります。一方、脳の緊張状態が続く事によって皮質ホルモン過剰に分泌されます。

    A)脳の海馬を委縮させ、記憶力低下、認知症の発症にも指摘されます。

    B)過剰に不安感に襲われる等抑うつ状態に陥るリスクが高まります。

    C)血糖の上昇、血圧上昇、更に進行すると糖尿病や狭心症、心筋梗塞、脳梗塞等生活習慣病の発症リスクが増します。

  4. 肌質の低下。睡眠中分泌される成長ホルモンは人間の成長にも不可欠ですが、肌のタ—ンオ―バ―を向上させ、美しい肌質を作るのに不可欠です。
    睡眠中定期的に深い睡眠(ノンレム睡眠)と浅い睡眠(レム睡眠)が訪れますが、ノンレム睡眠長い程成長ホルモンが多く分泌され、肌に良い影響を与えます。

良い姿勢を保つ

枕の使用は成長する子供に良い姿勢を保つには大変重要な役割を果たしています。正常の場合は人間の頚椎のアライメントはC型になっています。
しかし、現代社会の携帯、ゲーム、PCの使用で頚椎前屈なる時間が長くなっています。
この状態が続くと、頚椎周囲の筋肉のバランスが崩れ、頚椎のあるべき前弯状態が徐々に減弱、ストレート、後弯になって行きます。変形の始まりと進行の大きな要因ともなっています。
昼の生活は勿論、夜間睡眠時の枕が合わない事で、更に頚椎の側弯、ストレート、後弯に追い打ちをかけます。

枕の選択について

枕の選択

いざと枕を選択すると、皆様ほぼどんな枕が良いか良くわからないと同じ答えが返って来ます。枕の種類が多いも一つ原因ですが、そもそも何を基準にして枕を選ぶかわからない方が多いと思います。そうすると、素材、高さ、値段、宣伝している等の理由で買ってしまいます。枕が合わないと、寝つけが悪い、寝た気がしない、朝起きると肩回りが張っている、手のだるい、痺れる等の症状も出ます。
では、どんな枕が自分に合うかには先ず医学の原点から考えなければなりません。

これは正常な頚椎本来あるべきカ-ブです。なぜそのカーブが必要ですか?

  1. 頚髄は脳の下端の延髄から延長して来たものであります。頚椎脊柱管に入るには一定な角度をなして降りてきます。
    高速道路のインターチェンジと同じように、頚椎もそれに合わせて無理なく角度をなしています。ストレートネック、頚椎後弯になると、頚髄が頚椎脊柱管に侵入する所に鋭角になってしまいます。神経にダメージを与えます。
  2. 頚椎の前弯があるから、頭部の重さが頸部のカーブによってスプリングの様に逃げる様になっています。
    ストレートネックによって、頭の重さが全部頚椎に掛ける様になってしまいます。
    その状態が続きますと、頚椎に骨棘ができやすくなり、変形にも繋がります。
    そのストレートネックなるのは二つ要因があると考えられます。
    長期間前屈姿勢(仕事、家事、携帯、ゲーム、パソコン等)枕が合わない(枕を使わない、高い枕使用、頭に枕を当たる、低すぎ枕を使用、柔らかすぎる枕を使用)

以上の事を考えると、頚椎の前弯の姿勢を維持する為、長時間前屈した姿勢を避けると自分に合った枕を選択する事が大事と思います。
具体的どうすれば頚椎の生理状態を維持できますか?
長時間前屈姿勢に対して約30分毎に頸部極力後屈する様にします。
できるだけ長時間前屈姿勢を避けます。

 

枕の正しい使い方

診察中に患者様に寝ている時に枕はどのあたりに当てますかと尋ねると、ほぼ99%の方は頭にあてると答えます。
実は、頸部の生理状態を考えると、枕が頸部に充てるのは正しいと思います。

図の様に、仰向きの時に頸部前弯の姿勢に、側臥位時頚椎が真直ぐになるのは正しい睡眠の姿勢です。
頭部高過ぎ、頸部低すぎもしくは支えるものが柔らか過ぎ、側臥位時頸部も、頭部もきちんと一定の高さで支えられ、頚椎が真直ぐ成るような枕が必要です。
しかし、硬すぎるとごつごつして寝られませんし、やわら過ぎると支えになりません。
その為、長年間色々な資料を調べ、色んな業者の枕を買って来て、触って、体験して、幾つか程良い素材を見つけ、今の枕の素材に生かしました。
また、できるだけ多くの方に合うように、診察しながら、色々な方の頸部周囲のサイズを測り、今の枕の高さ、大きさ、自分で調整できるような仕組みを取り入れました。